カモノハシ

カモノハシは、その特異な繁殖方法で知られる動物で、哺乳類でありながら卵を産むことが特徴です。主にオーストラリアに生息しています。

オーストラリアには、コアラやカンガルーなど独特の動物が多く生息していますが、カモノハシはさらに異色の存在です。見た目はカワウソを連想させる一方で、ビーバーのような平たい尾や水かきのある短い足、そしてカモのようなクチバシを持っています。

カモノハシとは?

ここでは、カモノハシの分類群や生態、その特性について詳しく説明します。

カモノハシの分類

カモノハシは「動物界、脊索動物門、脊椎動物亜門、哺乳綱単孔目カモノハシ科カモノハシ属」に属する哺乳類です。カモノハシ科とカモノハシ属はカモノハシのみで構成されており、現在確認されている種は1つだけです。

一般的に哺乳類は胎生(たいせい)といって母体で発育して親と似た形態の子を産みますが、カモノハシは爬虫類や鳥類のように卵を産みます。

単孔類

カモノハシは「単孔類」と呼ばれるグループに分類されます。単孔とは「一つの穴」という意味で、これは排泄と産卵を同じ穴で行うことを指します。この穴は「総排泄孔(そうはいしゅつこう)」と呼ばれてます。

哺乳類で総排泄孔を持つのはカモノハシとハリモグラだけで、どちらもこの孔から尿や便などの排泄物を出します。ちなみに、鳥類ではこの特徴が一般的。

人のように排泄口が分かれていないため「単孔目」と呼ばれています。総排泄孔は爬虫類や鳥類にも共通して見られる特徴であるため、単孔目は哺乳類の中でも原始的なグループとされています。

また、単孔目の特徴として「卵を産む」ことが挙げられます。哺乳類の中で卵を産むのは、カモノハシとハリモグラだけです。

カモノハシは最も原始的な哺乳類

カモノハシとハリモグラの全ゲノム解析が進むことで、その進化の過程が明らかになっています。

研究によると、哺乳類の祖先は約3億年前に鳥類や爬虫類の祖先から分かれ、約2億年前にカモノハシやハリモグラと胎生哺乳類の祖先が分岐したとされています。

さらに、カモノハシとハリモグラの分岐は約5500万年前に起ったそうです。カモノハシは卵を産み、総排泄孔を持つなど、鳥類に似た特徴を持っているため、進化の過程で最も原始的な哺乳類と考えられています。

カモノハシが哺乳類に分類される理由

卵を産むカモノハシがなぜ哺乳類に分類されるのでしょうか?

哺乳類は通常、子に母乳を与えることが特徴です。カモノハシも例外ではなく、孵化した幼体に母乳を与えます。カモノハシには乳首がなく、腹部の乳腺から汗のようにミルクがにじみ出し、それが体毛を通じて幼体に届きます。

カモノハシが初めて知られたのは18世紀末で、その際、体表に乳首が見当たらず、解剖により乳腺が確認されました。乳首はありませんが、特殊な腹部の乳腺から母乳を分泌することで、カモノハシは哺乳類として分類されます。

カモノハシが卵を産むことが確認されたのは発見から約80年後で、小さな卵を産み、それを温める姿が観察されました。これにより、卵を産む哺乳類としての分類が確定しました。

カモノハシの生態

カモノハシの名前は、その独特なクチバシがカモに似ていることに由来します。夜行性で、単独で生活するため観察が難しい動物です。

水中では前足で力強く泳ぎ、尾を舵のように使って方向を変えます。主に水中の昆虫やエビ、ザリガニ、貝、ミミズなどを食べ、この特異なクチバシで器用に捕らえます。

カモノハシは視覚や聴覚が発達しているとはいえませんが、クチバシの感覚器官で獲物を探知することができます。

カモノハシの卵生活動

カモノハシはオーストラリア東部などの水辺に住み、トンネル状の巣を掘って卵を産みます。約2cmの卵を2個産み、それを温めて孵化させます。卵は弾力があり、粘液で覆われています。孵化後、幼体は約4ヶ月間、母親の乳腺から分泌される母乳を飲んで育ちます。

カモノハシは恒温動物で、体長は約40~60センチメートルです。肺で呼吸しますが、歯はありません。

オスの後ろ足には毒

オスのカモノハシは後ろ足のかかとから毒を分泌します。この毒は縄張り争いや繁殖期の競争に使われ、人間には致命的ではないものの、犬などの小動物には致死的になることもあります。人間が毒に侵されると、鎮痛剤が効かない激痛が数日から数か月続くことがあります。

目を閉じて獲物を探す

カモノハシのクチバシはゴムのような質感で、水中の圧力や微弱な電流を感知できるセンサーが内蔵されています。このため、目を閉じていてもクチバシで獲物を見つけることができます。水かきのついた足で泳ぎ、尾は方向を変える役割を果たします。

カモノハシはクチバシで獲物を感知し、昆虫や甲殻類、二枚貝、ミミズ、魚の卵や幼生などを食べます。通常は1~2分程度潜水します。視覚や聴覚はあまり発達していません。

カモノハシの生息場所

カモノハシは熱帯雨林から雪の積もる山地まで、さまざまな環境に生息しています。河川や湖の水辺に巣を作り、入り口は水中や土手にあるため外からは見えにくくなっています。

日本での展示

残念ながら、日本の動物園や水族館ではカモノハシを展示していません。カモノハシはオーストラリア政府により厳重に保護されており、国外への移送はほとんど許可されていないためです。

過去にはアメリカで飼育された例もありますが、現在ではオーストラリア以外の国ででカモノハシを見ることはほぼ不可能です。日本では東京の国立科学博物館で剥製が展示されており、三重県の鳥羽水族館ではカモノハシに関する映像を見ることができます。

カモノハシまとめ

カモノハシは、卵を産む哺乳類としてその珍しい生態が注目されています。夜行性で単独生活を好み、水中での高い適応能力を持っています。オスは繁殖期に毒を分泌し、視覚や聴覚は発達していないものの、クチバシの感覚器官で獲物を正確に捕らえます。

その奇妙な外見と生態により、当初はその実在すら疑われましたが、現在では科学的に詳しく研究され、進化的に非常に原始的な哺乳類とされています。カモノハシを見たい場合、オーストラリアを訪れることが唯一の方法です。