「忍ぶ」と「偲ぶ」どちらも「しのぶ」と読みますが、使われる場面や意味にははっきりとした違いがあります。
- 忍ぶ → 感情や痛みを「こらえる」
- 偲ぶ → 人や出来事を「思い出す」
この記事では、それぞれの言葉の意味や使い方の違いをさらに詳しく解説します。
「忍ぶ」と「偲ぶ」の基本的な意味
まずは、「忍ぶ」と「偲ぶ」がそれぞれどのような意味を持っているのかを確認しておきましょう。
どちらも日本語の中で古くから使われている言葉ですが、その使い方には微妙な差があります。
「忍ぶ」の意味と語源
「忍ぶ」は「我慢する」「隠す」「耐える」といった意味を持つ言葉です。
語源は「心の中でじっと耐える」ことから来ており、感情や行動を抑えるニュアンスが強いのが特徴。
たとえば、「恥を忍ぶ」「恋心を忍ぶ」「苦痛を忍ぶ」などのように、困難や感情を表に出さずにこらえる場面で使われます。
つまり、「忍ぶ」は“耐える”ことに焦点を当てた言葉なのです。
「偲ぶ」の意味と語源
「偲ぶ」は「懐かしく思い出す」「思い慕う」といった意味を持ちます。
漢字の「偲」には「人を思う」「心に留める」という意味があり、感情を抑えるよりも“心の中で思いを寄せる”ニュアンスが強い言葉。
例えば「故人を偲ぶ」「昔を偲ぶ」など、過去の人や出来事に思いを馳せる場面で使われます。
2つの言葉に共通する「しのぶ」という読み
「忍ぶ」と「偲ぶ」はどちらも「しのぶ」と読むため、混同しやすい言葉です。
しかし、共通しているのは“心の中に秘める”という点。
前者は感情を抑えたり隠したりする「忍耐」の意味、後者は思い出を心に留める「追憶」の意味に。
このように、どちらも内面的な動きを表す言葉であることは共通しています。
「忍ぶ」と「偲ぶ」の違いを徹底比較
ここからは、「忍ぶ」と「偲ぶ」の違いをより具体的に見ていきましょう。
それぞれが表す対象や感情、使われる場面には明確な差があります。
対象となるものの違い
「忍ぶ」は自分の感情や状況に対して使われることが多いのに対し、「偲ぶ」は他人や過去の出来事など“外的な対象”に向けられる言葉です。
たとえば、「苦痛を忍ぶ」「恋心を忍ぶ」は自分の内面を抑える表現ですが、「故人を偲ぶ」「過去を偲ぶ」は対象を思い出す表現になります。
感情や行動の違い
「忍ぶ」は行動的な忍耐、「偲ぶ」は感情的な追憶を表します。
前者は「こらえる」「隠す」といった動きを伴い、後者は「思い出す」「慕う」といった心の動きを表します。
つまり、「忍ぶ」は動的な我慢、「偲ぶ」は静的な思慕と覚えると区別しやすいでしょう。
使用場面の違い
「忍ぶ」は困難や感情を抑える場面、「偲ぶ」は人や出来事を懐かしく思う場面で使われます。
例えば
恋を忍ぶ、恥を忍ぶ、苦痛を忍ぶ
故人を偲ぶ、青春の日々を偲ぶ、恩師を偲ぶ
といったように、使われる文脈によって選ぶ言葉が変わります。
「忍ぶ」の正しい使い方と例文
ここでは、「忍ぶ」を実際に使うシーンを具体的に紹介します。
恋愛、困難、隠れる場面など、文脈ごとに見ていきましょう。
恋心を隠す場面での使い方
「忍ぶ」は恋愛において「想いを胸に秘める」という意味でよく使われます。
「人目を忍んで会う」
「恋心を忍ぶ」
これは、相手への気持ちを表に出せない切なさや、控えめな愛情を表す際に使われる言葉といえるでしょう。
耐え忍ぶ場面での使い方
困難や試練に耐える意味で使われる「忍ぶ」もよく見られます。
「厳しい冬を忍ぶ」
「屈辱を忍ぶ」
逆境の中でじっと耐える強さを表す言葉です。
このような使い方をすると、精神的な強さや覚悟を感じさせる表現になります。
身を隠す場面での使い方
「忍ぶ」には「隠れる」「目立たないようにする」という意味もあります。
「人目を忍んで暮らす」
「忍び笑い」
忍者の「忍」も同じ由来であり、「気配を消して行動する」という意味からきています。
「偲ぶ」の正しい使い方と例文
次に、「偲ぶ」の使い方を具体的に見ていきましょう。
「偲ぶ」は主に故人や過去に関する場面で使われます。
故人を偲ぶ場面での使い方
「偲ぶ」はもっとも一般的に葬儀や法要の文脈で使われます。
「故人を偲ぶ」
「亡き母を偲ぶ」
亡くなった人を思い出し、その人の人柄や思い出に心を寄せるときに用いられます。
この場合、「忍ぶ」を使うのは誤りとなるため注意が必要。
過去の思い出を偲ぶ場面での使い方
「偲ぶ」は過去の出来事や時代に思いを馳せるときにも使われます。
「学生時代を偲ぶ」
「青春の日々を偲ぶ」
懐かしさや感傷を表現する際にぴったりの言葉でしょう。
単なる“思い出す”よりも、情緒や余韻のある響きを持っています。
人柄や功績を偲ぶ場面での使い方
また、「偲ぶ」は人物の行いをたたえる文脈でも使われます。
「恩師の功績を偲ぶ」
「偉人の志を偲ぶ」
ここでは、単に懐かしむだけでなく、敬意や感謝の気持ちも込められています。
間違えやすいシーンと使い分けのポイント
「忍ぶ」と「偲ぶ」は混同しやすい言葉ですが、使い方を誤ると意味が通じにくくなることもあります。
間違いやすいシーンを挙げて、正しい使い分けのポイントを確認しておきましょう。
葬儀や追悼の場面ではどちらを使う?
葬儀や追悼の場面では必ず「偲ぶ」を使います。
「忍ぶ」は耐える意味を持つため、「故人を忍ぶ」とすると“亡くなったことを我慢する”という意味に近くなり、不自然。
「偲ぶ会」「偲ぶ言葉」など、追悼関連ではすべて「偲ぶ」が正解です。
恋愛の場面ではどちらを使う?
恋愛では「忍ぶ」を使います。
「恋を偲ぶ」と言うと意味が通じにくくなるため注意しましょう。
恋心を抑える、あるいは人目を避けて密かに愛するという意味を表したいときは、「恋を忍ぶ」「忍ぶ恋」が正しい表現です。
迷ったときの判断基準
どちらを使うか迷ったときは、「我慢・隠す=忍ぶ」「思い出す・慕う=偲ぶ」と覚えておくと便利。
つまり、自分の感情を抑える場合は「忍ぶ」、他者や過去を思う場合は「偲ぶ」です。
簡単にまとめると次のようになります。
- 内に秘めてこらえる:忍ぶ
- 心の中で思い慕う:偲ぶ
「忍ぶ」と「偲ぶ」まとめ
「忍ぶ」と「偲ぶ」はどちらも「しのぶ」と読みますが、意味はまったく異なります。
「忍ぶ」は感情や行動を抑えて耐えること、「偲ぶ」は人や出来事を懐かしむことを表す言葉。
混同すると文章の意味が大きく変わるため、文脈に合わせて正しく使い分けることが大切です。
特に「葬儀の場では偲ぶ」「恋愛の場では忍ぶ」と覚えておくと失敗しません。
日本語の奥深さを感じさせるこの2つの言葉、参考になれば幸いです。






