タヌキ

タヌキは都心部などではほとんど見かけませんが、少し田舎に行けば住宅街の近くでも見かけることがあります。その短い手足のフォルムやふわふわの毛、愛らしい顔立ちからペットとして飼いたいと考える人も中にはいらっしゃるでしょう。

タヌキをペットとして飼うことは出来るのでしょうか。

タヌキはイヌ科の動物で、農作物に被害を与えることもあり、迷惑がられることもありますが、実は臆病な性格です。また、タヌキは日本の昔話にもよく登場する親しみのある動物で、その愛らしい姿にはどこか憎めない魅力があります。

実際、特定の条件下でタヌキを飼育することは可能です。ただし、野生のタヌキは「鳥獣保護法」によって保護されているため、野生の成獣をそのまま飼うことはできません。

鳥獣保護法とは、正式には「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」で、狩猟が認められている動物を対象としています。

つまり、野生のタヌキをそのまま何の届け出もなく飼育することはできません。ただし、捕獲または保護された場合には、一時的に飼育することが認められています。この場合、各自治体に「生涯飼養許可」を申請する必要があります。

この記事では、タヌキの飼育方法や注意点などをまとめています。タヌキの飼育に興味があるという方は、ぜひ参考にしてください。

たぬきの寿命や生態、性格

たぬきは身近な動物ですが、犬や猫と違ってペットとして飼うイメージはあまりなく、実際のところ多くの疑問を持つ人もいるでしょう。

たぬきは大人しそうに見えますが、実際の性格や生態はどうなのでしょうか?また、どれくらいの寿命があるのでしょうか?意外と知られていないたぬきの生態について説明します。

たぬきは哺乳類イヌ科

たぬきの体長は約50センチくらいで、長い毛に覆われてた犬のような外見をしています。全体の姿が丸っこく「かわいい」と感じる人も多いかもしれません。

たぬきは、北海道では「エゾタヌキ」本州、四国、九州では「ホンドタヌキ」として知られています。近年では、森林伐採などの影響で、人間の生活圏にも現れることが増えています。

たぬきの寿命

野生では4~8年ほどですが、飼育下では10年ほど生きることができます。野生のたぬきは、天敵に襲われたり、餌が不足したりするほか、交通事故で命を落とすことも多いようです。

たぬきの性格

警戒心が強く、非常に臆病です。そのため、小さな音にも敏感に反応し、身の危険を感じると攻撃することもあります。人を襲うことはあまりありませんが、懐くことは少ないとされています。

たぬきをペットとして飼うことはできる?

ふわふわの見た目がとても愛らしいタヌキを、もしペットとして飼えるなら飼ってみたいと考える人もいるでしょう。しかし、タヌキをどこで手に入れられるのでしょうか?

ペットショップで買える?

結論として、タヌキはペットショップで販売されていません。これは、タヌキをペットとして飼うことが法律で禁止されているためです。ペットショップでタヌキを見かけないのもそのためです。

基本的には飼えない

タヌキをペットとして飼うことは基本的に禁止されています。野生の動物を許可なく捕まえたり、傷つけたりすることは法律で禁じられています。

タヌキは「鳥獣保護管理法」によって保護されているため、無許可で捕まえると「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」の対象となります。

例外として飼育が認められる場合

許可を得て一時的に飼育することができるケースもあります。タヌキは法律で狩猟が認められているため、狩猟期間内に捕獲した場合に限り飼育することが可能です。

必要な許可

保護されたタヌキを飼育する場合には、「生涯飼養許可」が必要です。怪我や病気のタヌキを保護する際には、各自治体に届け出る必要があるので注意しましょう。

タヌキを飼う方法

前述したように、タヌキは原則飼育はできませんがペットとする手段が皆無というわけでもありません。実際に飼育している人もいらっしゃいます。YouTubeなどに可愛いペットのタヌキが投稿されています。

ということで、タヌキを飼う際の注意点や必要な餌、飼育用品について調べてみました。

タヌキを飼う際の注意点

タヌキは元々野生動物であり、犬や猫と異なり飼育には多くの注意が必要です。以下に、タヌキを飼う際の重要な注意点をまとめました。

野生動物の凶暴性

タヌキは通常、警戒心が強く臆病な性格ですが、時折凶暴になることもあります。自然環境で自分を守るために、危険を感じると攻撃的になることがあります。音に敏感に反応し、予期せぬ動きで驚くことがあるため、刺激を与えないよう注意が必要です。

タヌキの凶暴性は防衛本能から来るものであり、根本的な性格が凶暴というわけではありません。小さな音でも驚き逃げ出すことがあるため、時間をかけて徐々に距離を縮める必要があります。幼少期から一緒にいることで警戒心を解くことができます。

タヌキの病気

野生のタヌキは以下のような病気にかかる可能性があります。

疥癬症

かいせんしょうと読みます。ダニが原因で毛が抜け落ち、衰弱して死に至る病気です。接触で感染するため、毛が抜けたタヌキには注意が必要です。

イヌジステンパー

犬が感染する病気で、正式名称は「犬ジステンパーウィルス感染症」。ウイルスが原因で、犬と同様にかかります。初期症状は通常の風邪に似ていますが、病状が進むと重篤な症状を引き起こします。

致死率が高く、このウイルスに感染した動物の致死率は50~90%とのこと。他のタヌキや犬にも感染する可能性がありますので異常が見られた場合は隔離し、すぐに動物病院を受診しましょう。

ただし、タヌキを診ることができる動物病院は限られています。事前にタヌキを診察できる病院を調べておくことが重要です。

鳴き声と匂い

タヌキは喧嘩や威嚇する際、小型犬のような甲高い鳴き声を発します。そのため、タヌキが鳴くような状況を避けることが大切です。また、強い匂いがあるため、近隣への配慮が必要です。もちろん糞尿の処理は必須となります。

音や環境に敏感

タヌキは大きな音や環境の変化に非常に敏感です。大きな音で気絶することもあるほど、臆病な性格です。飼育する環境は静かで落ち着いた場所が望ましいです。ミントの強い香りも嫌うため、飼育環境がタヌキにとって快適かどうかを常に気にかけることが大切です。

これらの注意点を理解し、適切な環境を整えることで、タヌキの飼育をより安全に行うことができます。

タヌキの躾

タヌキはイヌ科の動物で、見た目はとても愛らしいですが、完全な野生動物です。そのため、人間に対して強い警戒心を持ち、保護しても「慣れる」ことはあっても「懐く」ことは非常に少ないと言われています。そのため、一般的なペットのように躾けるのは難しいでしょう。

タヌキは非常に臆病で警戒心が強く、そのため攻撃的になることもあります。不用意に接すると危険な場合もあるので注意が必要です。

動物にしつけをすることは一般的ですが、タヌキにとって「しつけ」は「虐待」と区別がつかないほど怖いものだそうです。そのため、一度でも攻撃されると、二度と懐かない可能性があるということを頭に入れておいてください。

タヌキとの信頼関係を築くには非常に時間がかかりますが、崩れるのは一瞬です。つまり、タヌキを飼育する際は「しつけるのは至難の業」であり、臆病で攻撃的な性格であることを理解して接することが重要です。

動物園などで見かけるタヌキが人間に慣れているのは、日頃から人間と接する機会が多いためです。子タヌキを保護し、愛情を持って育てると、人間に対して警戒心が薄れることもありますが、成獣の場合は非常に稀ということを覚えておきましょう。

タヌキを飼うために必要な飼育用品

タヌキをペットとして飼うことは、犬や猫より難しいので推奨されませんが、どうしても飼いたい場合に必要な飼育グッズなどを調べたので一応紹介します。

飼育に必要なもの

  • ケージ(犬用のものがおすすめ)
  • ベッド(ペットベッドや毛布など)
  • トイレ(犬用のペットシートなど)
  • 餌(ドッグフード)
  • エサ入れ
  • 水入れ
  • 首輪・リード・ハーネス(外出時や散歩時)
  • キャリーケース(外出時の移動用)
ケージ

タヌキを飼うにはケージが必須です。自由に放し飼いにするのはおすすめできません。タヌキは臆病なので、安心して過ごせる場所を提供しましょう。頑丈で錆びにくいステンレス製の犬用ケージがおすすめです。

タヌキは雑食性ですが、肉類が好きです。ただし、保護直後は内臓に負担がかかるため、消化に良い食べ物を細かく切って与えるのが良いでしょう。

栄養バランスを考えるとドッグフードがおすすめです。犬用のドッグフードは、必要な栄養が似ているため手軽に購入でき、栄養バランスも良いです。その他に、果物や芋類なども好みに応じて与えましょう。赤ちゃんタヌキには、犬用ミルクを与えることもできます。

温度管理

タヌキは日本全国に生息しているため、日本の気候に慣れています。飼育下では温度管理にそれほど神経質になる必要はありません。しかし、真夏や真冬などの厳しい気候時には空調管理をしたり、毛布を与えると良いでしょう。

タヌキ飼育まとめ

タヌキは日本各地に生息し、その愛らしい姿からペットとして飼いたいと考える人もいますが、野生動物としての特性を持っています。

臆病で警戒心が強く、人間に「慣れる」までには相当な時間と労力が必要です。そのため、無理に飼育することはおすすめできません。

また、タヌキは法的にペットとして販売されておらず、入手が非常に難しい動物です。怪我をしたタヌキを保護する場合や、合法的に捕獲する場合に限り飼育が可能で、その際には自治体の許可が必要です。

タヌキは「臆病」故に「凶暴性」を持つ動物ではありますが根本的には凶暴ではありません。時間をかけて接することで信頼関係を築くことは可能です。ただし、なつくまでにはかなりの時間を要します。

タヌキは親しまれる動物ですが、そのイメージは可愛い見た目から来るものです。ペットとして迎え入れるのは難しいですが、もしその機会に恵まれた場合は、タヌキの性質を理解し寄り添ってあげることが重要です。