「遵守」と「順守」。両方「じゅんしゅ」と読み、雰囲気も何となく同じような「規則を守る」的な感じですね。
例えば、近年「コンプライアンス」(compliance)という言葉を目にする機会が増えています。
よく「法令じゅんしゅ」と訳されて広く使われていますが、その際に「じゅんしゅ」という表記が「遵守」か「順守」かで迷うことがあるかもしれません。
それでは、両者の意味や使い方に違いについて説明していきましょう。
遵守と順守の意味と違い
実際、どちらの言葉も「規則に従い、守ること」という意味で使用されますが、微妙なニュアンスの違いがあるかもしれません。
「遵守」は「順守」よりも厳格に守るというニュアンスが強いです。漢字の意味に着目すると、少し違ったニュアンスが感じられます。
どちらの言葉も法律や規則に従うことを示しますが、辞書などでは同義語として扱われることが多いです。
「遵守」の意味
まず、「遵守」の「遵」について考えてみましょう。「遵」は、「しんにょう」に「尊」という漢字が組み合わさっており「尊敬して従う」という意味を持ちます。
このため、「遵守」という言葉は、法律や規則を深く理解し、尊重したうえで厳密に守るというニュアンスが含まれています。
「順守」の意味
一方で、「順守」の「順」は、日常的によく使われる漢字で、従うことや素直であることを表します。このため、「順守」は規則を理解して守るというより、単にそのルールに従うという意味合いが強いです。
実は「順守」という表記は「遵守」の代わりに使われるようになったものです。1954年に国語審議会の「当用漢字表審議報告」で、「遵」という漢字が削除候補に挙がり、その代わりとして「順」が使われるようになりました。その後、メディアを通じて「順守」の表記が普及していったのです。
「遵守と順守」意味は基本的に同じ
「遵守」と「順守」は、基本的にはどちらも「規則を守る」という意味で使われ、どちらを選んでも誤りではありません。両者の違いは、主に表記上のものであり、意味の上では大差はありません。
しかし、漢字自体が持つニュアンスには微妙な違いがあります。
「遵」は「しんにょう」と「尊」という漢字から成り立ち、「尊重しながら従う」という厳格な意味合いが含まれます。
一方で、「順」は「素直さ」や「道理に従う」といった意味を持ち、比較的柔らかい印象を与えます。
そのため、「遵守」はより厳密な規律を守る場面で使われることが多いです。
「遵守」と「順守」の使い分け
両方とも「守る」という意味は同じですが、厳密さや場面に応じて使い分けが求められることもあります。
場面によっては、「順守」では適さない場合があるため、注意が必要です。
遵守: コンプライアンスの遵守、法律の遵守
順守: 規則の順守、マナーの順守
公用文には「遵守」が使われる
「遵守」は古くから使われてきた漢字であるため、国や地方自治体などの公的な文書では「遵守」が用いられています。
教科書も文部科学省の指定に基づいて作成されているため、「遵守」という表記が採用されています。
公用文には厳格なルールが存在し、漢字の使用にも細心の注意が必要です。公務員が公的な文書を作成する際は、「順守」ではなく「遵守」を使用することが求められます。
契約書では「遵守」を使用
ビジネスにおいて取引の詳細を記した契約書では、「遵守」が一般的に使われます。重要な合意内容を示す文書には、より厳格な印象を与える「遵守」が適しています。
新聞では「順守」を使用
新聞業界では「順守」の表記が慣習として定着しています。これは、順守という表記が誕生した経緯から業界内で統一されているためです。
もしメディア関連の仕事に従事している場合、「順守」が標準として使われるでしょう。
しかし、個人のブログや自主制作の発行物などでは「遵守」を使用しても問題ありません。メディア業界の慣習に従うかどうかは、状況次第です。
ビジネス以外ではどちらでもOK
「順守」という表現は、かつて使われていなかったため誤用と思われがちですが、そうではありません。意味自体は「遵守」と同じなので、ビジネスシーン以外ではどちらを使っても問題ありません。
たとえば、個人間の契約書やSNSの投稿では、気軽に「順守」を使ったり、より重要な場面では「遵守」を使ったりと、状況に応じて自由に使い分けることができます。
「遵守」と「順守」のまとめ
社会に出ると、熟語の使い方や意味を学ぶ機会が少なくなりがちです。
「遵守」と「順守」に大きな違いはないものの、使用されるシーンや細かなニュアンスに違いがあるため、ビジネスの場面で使用する際は気をつけることが大切です。
適切に使い分けることで、より洗練された印象を与えられるでしょう。
「遵守」と「順守」は基本的に同じ意味を持っていますが、どちらを使うかは文脈や使用する状況によって異なることがあります。
本記事ではその一例を紹介しましたが、企業や場面に応じて使い分けの基準が変わることも考えられますので注意してください。
そのため、柔軟に対応しつつも、慣習や微妙な違いを理解しておくと、スムーズに対応できるでしょう。
場面や文書の種類に合わせて、適切に使い分けを意識してみてください。