タヌキ

タヌキ(狸)といえば古くから身近な動物で、近年では東京でも目撃されるほど、より身近になっています。

しかし、タヌキの特徴や生態、そもそも何科なの?などについて詳しく知らない人も多いかもしれません。アライグマなど似た動物が多いため、誤解されることもあります。

ということで、タヌキの特徴や生態について紹介します。

タヌキとは?

タヌキは、哺乳綱食肉目のイヌ科タヌキ属です。

古くから存在する原始的な種とされています。漢字で「狸」と書かれるように人里近くに住むこともあれば、山奥で生活することもあります。

雑食性で何でも食べ、果物、種子、昆虫、ネズミなどの小動物、生ゴミなどさまざまなものを食べます。夜行性で、家族単位で行動することが多いそうです。

縄張りは広くありません。食物が豊富な場所には複数の群れが集まることもあり、他の群れと重なることもあります。

短い足とずんぐりした体型で知られていますが、季節によって体型は変わります。体長は約40~70cm、体重は4~10kgほどで、秋に最も太り夏には痩せるそうです。夏に見るタヌキは想像以上に痩せて見えるかもしれません。

イヌ科だけに姿かたちは犬に似ていて、体毛が無ければ犬のような顔つき。毛が短い子供のタヌキは犬と間違われることもあるそうです。体は灰褐色または茶褐色で目の周辺に黒い縁取りがあります。

たぬきの生態について

それでは、タヌキの生活行動などについて説明していきます。

年間の生活パターン

タヌキは一夫一妻制であり、春に繁殖期を迎えます。子供たちは初秋まで親の近くで生活し、雄は子育てに積極的で、食べ物を運んだり毛繕いをしたりして雌や子供を守ります。

子供は生後10ヶ月ほどで親と同じくらいの大きさになり、親との絆が薄れていきます。秋になると、親子や兄弟姉妹の絆が弱まり、独立して生活するようになります。冬眠を経て、雄も雌も生後10ヶ月で成熟します。

タヌキの習性

タヌキは通常3~5頭のグループで行動し、グループの大きさは季節によって変わります。複数の家族が一緒に集団行動をすることもあります。

夜行性で、日没の約1時間前から行動を開始し、真夜中の休憩をはさんで日の出まで餌を探します。また、特定の場所に排泄物を集中させる「ため糞」という習性があり、これは縄張りを識別する役割があると考えられています。

1匹のタヌキの行動範囲には約10ヵ所の「ため糞」があります。驚かされたときには仮死状態となり相手を欺く「タヌキ寝入り」という習性もあります。

タヌキの生息場所

タヌキは山地から郊外の住宅地まで幅広く生息し、特に樹林やその周辺、川や沼地などが点在する場所に多く見られます。
行動範囲は雌で約40~50ヘクタールに及び、約10ヵ所の休憩・採食場所とそれらをつなぐ道で構成されています。縄張りについては、それほど広くとらないとされていますが、確定していません。

タヌキの繁殖

発情期が近づくと、雄は後肢を上げて尿をかけるマーキングを増やします。交尾は2月下旬から4月にかけて行われ、5月から6月に大体5~7頭(最大例19頭)の子供を産みます。

妊娠期間は60~65日、授乳期間は約30日です。特定の巣は作らず、樹木の根元や岩の割れ目、他の動物が掘った穴などを利用して繁殖します。

タヌキの食性

タヌキは雑食性であり、ムクノキ、カキノキなどの果実、ギンナンなどの種子、木や草の根や地下茎などの植物のほか、昆虫やカエル、ヘビ、ミミズ、カニ、タニシ、小魚、小鳥、ネズミなど鳥類、両生類、魚類、多足類、甲殻類、軟体動物も食べます。

タヌキの分布

タヌキの本来の生息地は、日本、朝鮮半島、ベトナムなどのアジア地域およびロシアの一部です。日本国内では、北海道に住むタヌキはエゾタヌキ、本州以南に住むタヌキはホンドタヌキと呼ばれています。

近年では、もともと生息していなかったドイツなどのヨーロッパにも定着しているようです。

タヌキに関する豆知識

ここで、タヌキにまつわる豆知識を紹介します。

タヌキ寝入りの由来

「タヌキ寝入り」という慣用句は、タヌキが捕まりそうになったときや驚いたときに死んだふりをすることに由来します。
この行動は、生存戦略の一つで、一時的に気絶することで天敵を油断させ、その隙に逃げるというものです。このような行動は多くの哺乳類や昆虫にも見られます。

タヌキが慣用句に使われているのは、それだけ身近でその様子が観察される機会が多かったためでしょう。ちなみに、英語では「fox sleep」という表現があり、同じような習性を持つキツネが使われています。

同じ穴のムジナの由来

「同じ穴のムジナ」という表現は、一見違うように見えても実は同類であることを意味します。

この言葉は、悪いことをする人たちを指すネガティブな意味でよく使われます。ムジナは基本的にアナグマのことを指しますが、地域によってはタヌキを指すこともあります。

タヌキは自分で巣穴を掘らず、アナグマやキツネの巣に住み着くことがあり、ムジナとタヌキが同じ穴で生活する様子からこの言葉が生まれました。

ためフンの習性

タヌキは群れでトイレの場所を決め、同じ場所に排泄をします。この習性を「ためフン」と呼びます。毎日何頭も同じ場所で排泄をするため、その場所には排泄物が積み上がっていきます。

ためフンが見つかると、タヌキがその近くに住んでいる証拠となります。一度トイレと決めた場所は、世代を超えて使われ続けることもあります。

木登りもできるタヌキ

タヌキはイヌ科の中でも珍しく、木に登ることができます。ただし、あまり上手ではありません。柿などを果実を捕食するために何とか登り切ることができ、降りる際も不安定ながらも降ります。

イヌ科の動物は木登りに向いていない体を持っていますが、タヌキはそれでも登り降りができるという点で器用ですね。

木の上で果物を取ったり、くつろいだりする姿も見られます。さらに、タヌキは泳ぐこともでき、1メートルほどのジャンプ力も持っています。足が速いわけではありませんが、その運動能力は侮れません。

他の類似動物との見分け方

タヌキは日本に古くから住む野生動物ですが、外来種のハクビシンやアライグマと姿が似ているため、しばしば間違われますが、簡単な見分け方を紹介します。

まずはしっぽの違いが最もわかりやすいとされています。タヌキのしっぽは先端が黒く、他の部分は体の色と同じで、太くてふさふさしています。長さは体長の3分の1程度で短めです。

ハクビシンのしっぽは黒くて細く、体長と同じくらいの長さがあります。アライグマのしっぽには縞模様があるので、最も見分けやすい特徴です。

もう一つ、タヌキとハクビシンの見分け方。顔に注目してください。ハクビシンの顔には中心に白い線が入っています。野生動物の姿は一瞬しか見られないことが多いので、しっぽや顔の特徴を覚えておくと良いでしょう。

タヌキまとめ

タヌキは何でも食べ、できることは何でもやるという勤勉な動物です。

しかし、人間の近くに暮らしているために、畑を荒したりゴミ捨て場などで残飯をあさったり、民家の軒下に住み着いたりすることから害獣とされることもあります。

あまり良いイメージを持たれないタヌキですが、古くから日本の里山に共存してきた象徴的な野生動物であることに変わりありません。これからもより良い関係を築くために、タヌキについて理解を深めていきたいですね。