ナスカの地上絵は、その存在に関して古くからさまざまな議論がなされてきました。それらの壮大な作品がなぜ制作されたのかについては、未だに謎が残されています。
今回は、特に「地上絵はなぜ消えないのか?」という点に焦点を当て、その理由を解説します。
ナスカの地上絵は1939年に初めて発見され、約1600~2000年前の古代に描かれたものです。これらの絵は動物や幾何学図形が描かれており、世界中から多くの人々が訪れる名所となっています。1994年には世界文化遺産に登録されました。
ナスカ文化が栄えたのは紀元前100年から800年までの約900年間で、その宗教的中心地はナスカ川流域の「カワチ遺跡」でした。
この文化では、狩猟、農業、漁業が盛んであり、美しい色彩の土器が作られていました。文字を持たない文明だったため、土器のデザインが意思疎通の手段として機能していました。
ナスカの地上絵が長く保たれる理由
一般的に、私たちが描く絵は時間の経過とともに消えてしまいますが、ナスカの地上絵は何千年もの間、残っています。その理由はまだ完全には解明されていませんが、気候条件や地形の影響、そして古代の技術や役割が関与していると考えられています。
雨が降らない
まず、その地域が極めて乾燥していることが挙げられます。ナスカの年間降水量は非常に少なく、地上に描かれた絵が雨で流れる心配はありません。
ナスカの年間降水量はわずか4mmほどであり、これが1500年以上も続いています。このような乾燥した気候では、地上に描かれた絵が雨で流される心配がありません。
地形の影響
次に、地上絵は地表の小石を取り除くシンプルな方法で描かれ、下の白い石灰質の土が露出しています。ナスカの大地は硫酸カルシウムを多く含んでおり、霧も多い環境であるため、土と水分が混ざり合って強固な地盤を形成しています。
このため描かれた地上絵は風化に強く、消えにくい特性を持っています。
野生動物がほとんどいない
ナスカの地域には動物がほとんど生息していないため、地上絵が傷つく心配はありません。
ナスカの地上絵には、主に鳥の絵が描かれています。しかし、一部にはアルパカやサル、クジラなどの動物の絵もありますが、これらはナスカの地域には生息していない動物です。実際、ナスカ周辺の砂漠地帯で発見されたパラカス文化のお墓には、アマゾンで獲れる皇后インコの羽で作られたマントや旗などが見つかっています。
しかし、ナスカの地域には実際にはほとんど動物が生息していないとされています。そのため、野生動物による地上絵の荒廃はほとんどありません。このことが、多くの地上絵が現代まで保存されている理由の一つと考えられています。
もし、ナスカにバッファローやヌーの大群が存在していたら、地上絵はすぐに破壊されてしまうでしょう。
地上絵を守る人々
ナスカの地上絵を発見し、保護に尽力した研究者や学術機関が存在し、地上絵の保存に貢献しています。
ナスカの地上絵は、約100年前に発見されました。1939年にアメリカ人考古学者ポール・コソック氏が動物の図形を発見したことが始まりでした。
ポール・コソック氏と一緒に研究を行ったドイツの数学者・考古学者である「マリア・ライヘ」さんは、地上絵の保護に熱心に取り組みました。マリア・ライへさんは自らの財産を使い、ナスカの地上絵の研究と保護に生涯を捧げました。その成果の一つとして、「ミラドール」と呼ばれる高さ20mの観測塔を建設しました。
マリア・ライへさんが1998年に95歳で亡くなった後、ペルー政府は地上絵周辺への立ち入りを制限しました。2015年には、ペルー文化省と山形大学の「ナスカ地上絵プロジェクトチーム」との間で、地上絵の保護と学術協力のための特別協定が結ばれました。
ナスカ地上絵の発見以来、研究者たちの保護活動が絵の保存に大きく貢献しています。
これらの4つ要因が組み合わさり、ナスカの地上絵は現代まで保存されています。