言葉

「鑑賞」と「観賞」は読み方が同じで、意味も非常に似ています。どちらも何かをじっくり見る際に使われる言葉ですが、対象や見方によって使い分けが可能です。

同じ「かんしょう」という読み方でも、使われる漢字によって微妙に意味が異なります。正しく使い分けないと、読む側にに誤解を与える、ということもあるかもしれません。

ここでは「観賞」「鑑賞」という同音異義語の違いについて解説していきます。

「鑑賞」と「観賞」の意味

「鑑賞」と「観賞」の意味を解説します。見る対象によって「鑑賞」と「観賞」を使い分けましょう。

「鑑賞」の意味

「鑑」という漢字には「鑑定」という言葉があるように「見極め・品定め」という意味があります。「鑑賞」は、「芸術的な作品などを見て、その意図や感性を感じ取り、味わう」という意味があります。「鑑賞」は、人が手を加えた芸術作品などを理解し、味わう行為を指します。

芸術的な作品とは例えば、音楽や絵画、演劇などが含まれますね。鑑賞者は視覚だけでなく、聴覚や触覚などの五感を使って作品の価値を感じ取り味わいます。

「観賞」の意味

「観賞」は、何かを見て楽しむことを意味します。「観察」「観測」などと同じく「観」という漢字が含まれる通り、主に「目で見えるもの」が対象です。「観光」や「観戦」などの言葉にも使われるように、何かを見ること自体を楽しむ意味合いがあります。

「観賞」には「見たままを楽しむ」という意味もあります。自然の景色や動物・植物など、自然のままの美しさや趣を味わう行為が「観賞」に該当します。観葉植物や観賞魚などもそうですね。視覚を主に使って楽しむ行為です。

「鑑賞」と「観賞」の使い分け方

「鑑賞」と「観賞」を区別するポイントは、対象の種類にあります。

「鑑賞」の「鑑」は、「鑑定」などの言葉に使われ、評価や深い洞察を伴います。芸術作品を評価したり、その奥深い意味を読み取るときには「鑑賞」を使います。

一方「観賞」の「観」は「見る」という意味です。「観賞」は、目に見えるものをそのまま楽しむときに使います。

映画の場合

映画は見るものですが、人の手で作られた作品なので基本的には「鑑賞」でいいと思います。しかし、娯楽色の強い作品や視覚で楽しむ趣が強い作品は「観賞」が使われることもあります。芸術作品などは迷わず「鑑賞」ですね。

音楽の場合

これはもう、観るではなく聴くですから「鑑賞」です。さらに、制作者の意図や作品の深い意味を楽しむといった芸術性がありますから「鑑賞」が適しています。

DVD・CDの場合

基本的には「鑑賞」。DVDには映像や音楽などの作品が収録されているため「鑑賞」という表現が適しています。CDも同様に「鑑賞」となります。

動植物の場合

動物や植物の美しさを楽しむ際には「観賞」を使います。前述した「観葉植物・観賞魚」も同じ意味合いです。自然そのものの見た目を楽しむのは「観賞」です。

花火の場合

花火を見る際には、目の前の景色をそのまま楽しむため「観賞」を使います。人の手による作品で芸術性もあるので難しいところですが、そのまま見た目のきれいさを楽しむ趣が強いため「観賞」が一般的です。

「鑑賞」と「観賞」のまとめ

「鑑賞」と「観賞」は、対象によって使い分けられます。芸術的な作品には「鑑賞」を、自然の景色や花などを楽しむときには「観賞」を使います。ただし、一般的に「鑑賞」が使われる場合でも、見たままを素直に楽しむ際には「観賞」を使うこともあります。

見る対象や気持ちに応じて「鑑賞」と「観賞」を使い分けることで、より適切な表現ができます。